スイスで転職・退職・出国するときの2nd pillar。vested benefits の基本
スイスで会社員として働いていると、2nd pillar は毎月の給与控除の一部として自然に積み上がっていきます。そのため、多くの人は在職中にあまり意識しません。ところが、本当に重要になるのは転職、退職、失業、留学、海外転出など、「会社の pension fund から外れるタイミング」です。
このときに理解しておくべきなのが vested benefits です。仕事を辞めたからといって 2nd pillar の資金を自由に現金化できるわけではありません。一定の条件を満たさない限り、資金は自分の自由預金にはならず、専用の受け皿へ移す必要があります。ここを知らずに放置すると、資金が意図しない場所に送られたり、その後の管理が面倒になったりします。
この記事では、スイスで転職、退職、失業、出国をするときに特に重要な 2nd pillar と vested benefits の基本を実務目線で整理します。
結論
結論からいうと、スイスの 2nd pillar は、転職や退職で会社の pension fund から外れても、自由に使える現金にはなりません。次の勤務先の pension fund に移すか、条件を満たさない期間は vested benefits account に置くのが基本です。
2nd pillar への加入は、少なくとも17歳以上、AHV の対象で、固定雇用があり、年収が少なくとも CHF 22,680 であることなどが基準です。これを満たさなくなると、2nd pillar の通常加入から外れます。その場合、積み立てた資金は vested benefits account に移す必要があります。もし自分で口座を開かなければ、資金は Substitute Occupational Benefit Institution に自動的に送られます。
また、2nd pillar は完全に触れない資金でもありません。一定条件のもとで、住宅購入、自営業化、永久出国では早期引き出しが可能です。ただし EU/EFTA へ移る場合は mandatory portion を現金受取りできず、blocked account に残さなければならない点が重要です。
前提
まず前提として、2nd pillar は「会社ごとの退職金」ではありません。勤務先ごとの pension fund に積み立てられますが、本質は自分の職業年金資産です。そのため、転職しても消えるのではなく、移す前提で考える制度です。
次に、在職中は employer が半分以上を負担してくれるため意識しにくいですが、退職すると suddenly 自分で受け皿を決める必要が出ます。ここで初めて「vested benefits」という言葉が現れ、混乱しやすくなります。
また、自由に引き出せるケースは限定されています。住宅購入、自営業化、永久出国といった法定の例外がある一方で、「少し生活費が苦しいから使う」は基本的にできません。だからこそ、2nd pillar は現金感覚で見ない方がよいです。
実際の流れ
まず、勤務先を辞める、あるいは年収が threshold を下回って 2nd pillar の対象から外れると、現在の pension fund から離れることになります。その時点で、積み立てた資金は次の受け皿へ移す必要があります。
次の仕事がすぐ決まっているなら、通常は新しい employer の pension fund へ transfer します。これは「新しい仕事に入ったら自動で何とかなる」と思わず、旧 fund と新 fund の情報を確認し、自分の資金がきちんと移されたか追う方が安全です。
次の仕事が未定、失業、留学、短期休職、海外移動などで 2nd pillar の条件を満たさないなら、vested benefits account を自分で開きます。そこに occupational pension の資金をいったん保管します。もし自分で口座を用意しなければ、資金は Substitute Occupational Benefit Institution に自動送付されます。制度上は安全ですが、後から自分で投資先や条件を見直したい人にとっては、先に受け皿を決めた方が分かりやすいです。
また、特定のケースでは early withdrawal が可能です。住宅購入では principal residence であること、50歳までは全額引出し可能、50歳以降は一部制限、5年に1回までなどの条件があります。自営業化では、開始後1年以内に申請し、実際に self-employed である証明が必要です。永久出国では早期払い出しが可能ですが、EU/EFTA へ移る場合は mandatory portion を現金で受け取れず、Swiss blocked account に残す必要があります。
よくある失敗
一番多い失敗は、退職後に 2nd pillar を放置することです。自分で受け皿を決めないと Substitute Occupational Benefit Institution に送られますが、その後の管理が分かりにくくなりやすいです。
次に多いのは、転職時に資金移管を employer 任せにして確認しないことです。制度上は流れる前提でも、実務では自分で追った方が安全です。
三つ目は、失業中や留学中に「使わないからそのままでいい」と考えることです。実際には置き場所を明確にしておかないと、資産管理の全体像が見えなくなります。
四つ目は、永久出国なら全額現金化できると思い込むことです。EU/EFTA への移住では mandatory portion の扱いに制限があります。ここは非常に大きな誤解ポイントです。
注意点
注意点として、2nd pillar は pension fund ごとに規約差があります。法律の共通枠はありますが、buy-in や給付条件など細部は各 fund のルールに従います。一般論だけで終わらず、自分の fund 情報を確認することが大切です。
次に、住宅購入のための引出しは便利に見えても、将来の老後資金を前倒しで使う行為です。短期的な資金繰りだけで判断しない方がよいです。
また、既婚または registered partnership の場合、住宅購入や自営業化などの早期引出しには spouse または partner の同意が必要です。
判断基準
何を最初に確認すべきか迷ったら、基準は三つです。次の employer が決まっているか、2nd pillar の threshold 条件をまだ満たしているか、スイスに残るのか出国するのか。この三つです。
次の employer があるなら transfer、ないなら vested benefits account、永久出国なら withdrawal 条件確認。この整理ができれば、実務はかなりシンプルになります。
まとめ
スイスの 2nd pillar は、在職中だけでなく、転職や退職のタイミングでこそ理解が必要な制度です。条件を満たさなくなったとき、資金は vested benefits account へ移すのが基本で、放置すれば Substitute Occupational Benefit Institution に送られます。住宅購入、自営業化、永久出国では早期引出しの道もありますが、EU/EFTA への移住では mandatory portion を現金受取りできません。
移住者にとって大切なのは、2nd pillar を「会社の話」で終わらせず、自分の資産として追うことです。ここを理解しておくだけで、転職や出国時の混乱はかなり減ります。
次にやるべきこと
次にやるべきことは、今の pension fund の annual statement を確認し、自分がどの fund にどれだけ積み立てているか把握することです。転職や退職予定があるなら、次の受け皿を employer fund にするのか、vested benefits account にするのかを先に決めてください。
出国や住宅購入を考えている人は、一般論だけで判断せず、早めに自分の pension fund に条件確認を取るのが安全です。
