シンガポールで退職するときのNotice Periodと病欠ルールを整理
結論
シンガポールで退職や転職を考える日本人が最初に理解すべきなのは、「辞めると言えばいつでもすぐ辞められるわけではない」という点です。シンガポールでは、雇用契約にnotice periodがあれば、それに従って通知期間を勤務するか、または代わりに compensation in lieu of notice を支払う必要があります。しかも、通知は書面で行う必要があります。口頭で上司へ伝えただけでは、実務上かなり危険です。
結論から言うと、退職時に最も重要なのは、契約書のnotice periodと、最後の勤務日がどう数えられるかを正確に理解することです。MOMの案内では、notice period は通知した日を含み、祝日、休日、非勤務日も含めて数えます。さらに、病欠を取っても原則としてnotice periodは延長されません。つまり、日本でありがちな「病欠した分だけ最後の日が後ろにずれるのでは」という発想は、そのままでは当てはまりません。
前提
MOMのTermination with noticeの案内では、雇用契約にnotice periodが書かれている場合、従業員が辞めるときはその期間を勤務するか、代わりに compensation in lieu of notice を支払う必要があります。noticeは双方同じ長さであるべきで、契約に従います。また、noticeは書面で行う必要があり、termination letter が必須です。書面通知がない場合、従業員としての地位が残る扱いになる可能性があるため、かなり重要です。
もし契約書にnotice periodが書かれていない場合でも、ルールがないわけではありません。MOMは、勤務期間が26週未満なら1日、26週以上2年未満なら1週間、2年以上5年未満なら2週間、5年以上なら4週間という法定noticeの目安を示しています。つまり、「契約書にないから明日辞められる」ではありません。
また、leaveとの関係も日本人が誤解しやすい部分です。MOMでは、年休を使ってnotice periodを前倒しするには雇用主の同意が必要です。一方で、承認された年休をnotice期間中に取得すること自体は可能で、その場合はnotice期間の一部としてカウントされます。無給休暇は雇用主の裁量であり、延長は本人の同意がある場合に限られます。そして病欠については、Employment Actの対象であれば、paid or unpaid を問わずnotice期間の一部として扱われ、雇用主はその分notice periodを延長できません。
実際の流れ
実務では、まず退職を考えた時点で雇用契約のnotice period条項を読み直します。ここで見るべきなのは、単に「何週間か」だけではありません。試用期間中か、本採用後か、双方同一条件か、pay in lieuが可能かも確認した方がよいです。MOMの最低ルールより契約が優先される場面が多いため、自己判断せずまず契約基準で見ます。
次に、退職意思を伝える前に、最終勤務日を自分で計算します。シンガポールではnoticeを出した日を含み、土日や祝日も含めて数えます。たとえば1か月noticeなら、通知日から1か月後の前日が最終勤務日になる考え方です。ここを勘違いすると、次の会社の入社日設定や帰国便の手配でズレます。
そのうえで、書面でnoticeを出します。MOMはtermination letterを必須としています。メールでも紙でも、書面として証拠が残る形が重要です。さらに、相手に受領確認をもらっておくと後のトラブルを防ぎやすいです。日本人は礼儀上口頭説明を重視しがちですが、シンガポールの退職実務では書面が非常に重要です。
もし転職で少しでも早く次の会社へ移りたいなら、年休の相殺やwaiver of notice period を会社と相談します。MOMは、双方合意によるnoticeの免除を認めています。年休相殺は承認が必要で、未消化年休の扱いも変わります。感覚的に「有給が残っているからその分早く辞められるはず」と思うと危険です。
また、退職直前に体調を崩すケースもあります。MOMの案内では、Employment Actの対象で、所定の条件を満たす従業員は病欠の権利があります。3か月以上勤務していればpaid sick leaveまたはhospitalisation leaveの権利が発生し、6か月以上勤務で外来14日、入院60日のフル権利になります。しかも、notice期間中に病欠を取っても、それはnotice期間の一部として扱われ、雇用主はその分延長できません。退職前だから病欠を取れない、という理解は誤りです。
よくある失敗
一番多い失敗は、口頭で辞意を伝えた時点でnoticeが始まったと思い込むことです。MOMは書面通知を求めています。口頭だけでは後から「正式なnoticeを受けていない」と言われる余地があります。
次に多いのが、notice period の数え方を間違えることです。日本の感覚で営業日だけだと思い込むとズレます。シンガポールでは祝日、休日、非勤務日も含みます。
三つ目は、年休を残していれば自動的にnoticeを短縮できると思うことです。前倒しには雇用主の同意が必要で、通常の年休取得と相殺は扱いが違います。
四つ目は、病欠を取るとnotice periodが延びると誤解することです。Employment Actの対象であれば、病欠はnoticeの一部として扱われ、雇用主はそれを理由に延長できません。
注意点
まず、退職時の実務は「辞めたい意思」より「契約上どう辞めるか」が重要です。特に次の会社の入社日や帰国予定が絡む場合、最終勤務日の読み違いは大きな問題になります。
次に、無給休暇と病欠は扱いが違います。無給休暇は雇用主裁量で、延長も本人同意が必要ですが、病欠はEmployment Act上の権利条件を満たせば別の扱いになります。ここを混同しないことが大切です。
また、病欠の権利は勤務期間によって変わります。3か月未満では有給病欠権利がなく、3か月から6か月は按分、6か月以上でフル権利です。退職時期が近い人ほど、この線引きを知っておく意味があります。
判断基準
退職時にどう動くべきか迷ったら、判断基準は4つです。1つ目は契約上のnotice periodが何日か。2つ目は書面通知をいつ出すか。3つ目は年休やwaiverで前倒しできる余地があるか。4つ目は病欠や無給休暇が最終日にどう影響するかです。
この4つを整理すれば、転職時の入社日設定も、帰国日設定もかなり正確になります。シンガポールでの退職は感情ではなく、日付と書面で動くと考えた方がよいです。
まとめ
シンガポールの退職ルールは、notice period、書面通知、休日を含む日数計算、年休相殺、病欠の扱いを正しく理解しておくことで、かなり読みやすくなります。特に日本人が間違えやすいのは、営業日ベースで考えること、口頭通知で足りると思うこと、病欠でnoticeが延びると思うことです。
転職でも帰国でも、最後の数週間は次の生活準備で忙しくなります。だからこそ、退職ルールは早めに整理しておくべきです。最終勤務日を正確に読めるだけで、かなりのストレスを減らせます。
次にやるべきこと
- 1雇用契約のnotice period条項を読み直す
- 2最終勤務日を自分で計算してから退職意思を伝える
- 3必ず書面でnoticeを出し、受領記録を残す
- 4年休相殺やwaiverの可否を会社と確認する
- 5病欠権利の有無と勤務期間による違いを確認する
この記事はシンガポール記事の18本目です。現在18本、30本まで残り12本です。
